為替相場の分析を行いたいと思います。まず、為替の中期的な決定要因としては、経常収支が近代経済学の教えでは要因とされています。
経常収支による分析
ここでは、財務省が出している四半期ごとにまとめた地域別の国際収支統計を用いて分析します。
経常収支は16か月程度先の為替に影響を与えるとされており、この前提に基づいて下記の分析をすすめます。
対中国の経常収支動向
対中国での経常収支は、直近四半期で過去最大の黒字となっています。
下図は相手国側から見た5四半期前の対日収支(千億円単位)と、人民元日本円レートの推移です。
確認すると、直近2四半期で日本が黒字になっており、過去最大規模となっています。要因としては、旅行収支が黒字であるほか、2015年をピークとする上海ショックの影響で中国の輸出モデルが崩壊した可能性があることです。
日本は、チャイナリスク回避のため、中国からの輸入を減らし、ベトナムに切り替えるなどしています。
どちらにせよ、過去最大規模の対日赤字を抱えることとなった中国は、今後、人民元安が止まらない可能性があります。
対米国の経常収支動向
対米国の経常収支は、実は、もうピークアウトしており、経常黒字は縮小しています。
下図は相手国側から見た2四半期前の対日収支(千億円単位)と、ドル円レートの推移です。
今後は、トランプシンドロームで、莫大な対日赤字削減のために、いやおうなしに、円高になることが予測されます。
対スイスの経常収支動向
対スイスの経常収支については、経常赤字が減少しています。
下図は相手国側から見た2四半期前の対日収支(千億円単位)と、スイスフラン円レートの推移です。
スイスは、日本に対して数少ない黒字国なのですが、その黒字がピークを付けて以降、円高に振れています。
対英国の経常収支動向
対英国の経常収支については、経常黒字が拡大しています。
下図は相手国側から見た6四半期前の対日収支(千億円単位)と、ポンド円レートの推移です。
英国はもともと経常赤字国として有名です。2016年のユーロ離脱によるポンド安で、英国の金融業は景気が良くなったので、ポンド安はしばらく来ないだろうと若林栄四先生はおっしゃっていましたが、実際には、過去最大の対日赤字を出しています。
日立の鉄道が英国で稼働したりしているのが、影響しているのでしょうか。
対EUの経常収支動向
対ユーロ圏の経常収支については、黒字が拡大しています。
下図は相手国側から見た4四半期前の対日収支(千億円単位)と、ユーロ円レートの推移です。
2016年中盤の為替レートの底打ちで、経常黒字が拡大しているのが分かります。
対各国経常収支の対前年伸び率
下図は、各国に対する経常収支の前年伸び率の推移です。直近で特筆すべきは、対中国の黒字が増えていることです。意外に思われるかもしれませんが、今後、人民元安につながるので注意が必要です。
また、英国についても日本の黒字が増えています。最近では、日立の活躍などがニュースを賑わせています。万年ポンド安の英国ですが、またジョージソロスに狙われないとも限りません。
オーストラリアについても、日本は赤字なのですが、資源安の影響で経常赤字がどんどん減っている状況です。
サイクルによる分析
ドル円の分析
さて、サイクルによる分析ですが、ドル円は、8年、16年のサイクルがあることがわかっています。
下記は、ジュグラーサイクルの動向です。株価よりいち早く、2015年6月にピークを付けています。目先は2020年前後までの下落予測となっています。
ただ、これは、中期分析なので、短期では、2016年6月からの中間反騰のように担ぎ上げられることがあるので、要注意です。
下図は、ドル円のジュグラーサイクルとアームストロングの8.6年サイクルを図示したものです。
下図は、エドワードデューイによる分析をドル円レートに図示したものです。
ポンド円の分析
次に、ポンド円について分析します。ドル円同様に、ジュグラーサイクルの動向をみると、ドル円と比較して、下落率が大きいことが分かります。ただし、2000年以降は日本の相対的衰退により、上昇率がドル円をアウトパフォームしています。
下図は、ポンド円のジュグラーサイクルとアームストロングの8.6年サイクルを図示したものです。
下図は、エドワードデューイによる分析をポンド円レートに図示したものです。
まとめ
ここまで、分析を進めてきてわかることは、直近の経常収支動向として、対米黒字はピークを更新しないものの、対英黒字、対中黒字が過去最大を記録していることが分かります。
直近では、財務省の統計がないのでファンダメンタルズの裏付けが分かりませんが、対日赤字を抱えると思われるトルコリラが暴落トレンドにあります。
クロス円で考えれば、ポンド、人民元が今後大きく下落しそうです。
仮想通貨バブルははじけた
2015年の上海ショックを機に始まった仮想通貨バブルは、2017年末でいったんはじけて、2018年は調整局面となりそうです。
それと同時に、株価や為替も中期循環のピークを付けて大きく下落します。
仮想通貨は、もはやリスク回避のためのアセットクラスではなく、ここまででかいバブルをやれば、立派なリスク選好資産です。
2018年は、今までのバブルが巻き戻す局面になるでしょうから、私は、日本円メインの運用でいきます。
これからどうするか
いったん仮想通貨は様子見で、これ以上深入りすることはありません。相場全体の調整局面では、とれる利益は1割、2割です。
経常収支動向から考え、ポンドを借りて日本円を持つポジションをしばらく継続していく予定です。
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