現在の再生可能エネルギーを取り巻く現状について考える。日本では、太陽光発電の導入コストが低下せず、再生可能エネルギーで立ち遅れた展開となっている。また、世論から再生可能エネルギー賦課金の上昇について、批判を受け、固定価格買い取り制度の買取価格の見直しや、競争入札の導入が図られている。

現在の太陽光パネルの世界生産の6割以上を中国が占めている現状を考えると、太陽光パネルの低価格化をいたずらに追及することは、国内産業の窮乏化を加速させると考えられる。

中国製の安い太陽光パネルがもたらした影響は甚大である。欧米にてダンピング課税がとられ、ドイツの国内メーカーはすべて倒産して消滅した。現在の中国の産業における覇権への野心は明らかである。

中国は、国を挙げた輸出促進策により、インド洋の小国に多額の借金を負わせ、土地を奪うという新植民地主義とも言われる取り組みを推進している。

現在の日本においても、北海道等において中国資本の企業により太陽光発電用の事業用地が次々と買収されており、国難といえる状況である。自民党のある議員が、このままでは、日本人は、中国人の所有する土地を借りるだけの存在になると警告している。

このように、中国は持ち前の価格競争力を武器にした産業促進政策により、その覇権主義を強めている。 

日本の家電メーカーは、すでに太陽光パネルの価格競争において、中国企業に競争劣位であり、このままでは、いずれすべて消滅してしまうだろう。

実は、太陽光パネルの導入は、エネルギーの地産地消にはならない。太陽光パネルはほとんどこれから、中国製になるだろう。

100万円の中国製パネルを購入すれば、その金額は丸々中国の利益になる。そして、残りの10年間をかけて、中国への債務を返済しているにすぎないのである。

これは、到底、地産地消とは呼べない。地政学上も、LNGや石炭を豪米から調達しているほうが、よほど国益にかなっているといえる。

つまり、日本における再生可能エネルギーの導入コストが高いという議論は、致命的に国益を損ない、国内産業を崩壊させ、日本を窮乏化させる可能性が高い政策につながるといえる。

最近、ロイターにおいてもニュースになっていたが、インドにおいても、安い中国製品が流入して、インドメーカーが中国メーカーにたいして競争劣位であるため、国産品の太陽光パネルが駆逐されしまったということである。

そして、公共政策は、地元の産業を前提にして初めて成り立つものであるというインド国内の事業者の声が紹介されていた。

そこで、日本におけるエネルギー政策において、もっとも重視すべき点は、日本の競争力を最も生かせる点に注力すべきであるということである。

これは、ずばり、次のような省エネ家電や省エネ建材に着目するべきであると見ている。

・省エネ性能の高い空調用機器(エアコン)
・効率性の高い給湯器
・性能の高い断熱サッシ(Low-e 複層ガラス)
・国策として開発してきた蓄電池やバッテリー

つまり、太陽光パネルの導入コストに絞った議論をしていれば、日本は競争劣位であるから、たちまちに国富が流出して、実質的なエネルギー自給率は低下してしまうだろう。

しかし、日本が競争優位性を持っているこれらの省エネ機器をセットで考えると、話は違ってくる。

日本の住宅において、4割が無断熱であるという調査結果が出ている。つまり、これらの住宅を省エネ回収すれば、エネルギー消費量が少なくとも半分になるから、住宅部門のエネルギー消費量は2割も減ることになるのである。

また、省エネ機器に関しては、日本企業が競争優位であることから、国内産業の振興にもつながるといえる。

しかしながら、最終的に、本丸の太陽光パネルの導入においては、いたずらに価格低下のみを促す政策をとることは、国内産業の窮乏化につながるということを踏まえた計画の策定が必須である。

つまり、国内産業の振興を前提とした太陽光パネルの導入コストの低下を図るべきである。

そのために、安い中国企業製のパネルについては、欧米のように高い関税率を課す一方、国内で作られる太陽光パネルについては、エネルギーの地産地消の観点からも、優遇するべきである。

一律に、ただ単に安いパネルを導入するという議論ではなく、日本において再生可能エネルギーの導入コストが低下しているのは、産業競争力が低下して、事業者の能力が低下しているという事実を直視した政策を打つべきである。

そのためには、国内事業者間での競争を促すとともに、国内事業者が優位性をもつ省エネ機器とセットにしたZEHや省エネリフォームの推進に政策の重点を絞るべきである。