今後の日本経済が人口減少により2050年にはインドネシアと同じ経済規模になることはデントにより予測されています。
 なぜこの100年に及ぶ人口停滞が起きたのかということは、今後の日本を研究する社会科学のメインテーマになるでしょう。
 まず、思想的な原因として考えられるのが、国家による制約から解き放たれた個人が自由を追求した結果であるということです。戦前においては、農家における大家族を中心とする世帯が多数を占めていました。国家の政策として産めよ増やせよ運動が提起され、戦争に勝つために子供を作るということが至上命題とされていました。この政策とあいまって、1940年から1949年の間には、8人兄弟という家族構成は当たり前のように見られました。
 戦後の高度成長のキードライバーとなったのがこの農村の余剰労働力でした。農村から都市に人口移動が起こり、団塊世代はバブル経済を作り出しました。ただし、これはどこの国にも見られることですが、都市というのは子供を多く作るのには不適な場所です。一人当たりの居住面積は狭く、公園面積ーも狭く、子育てに必要なスペースは限られています。結果として都市に移動した世代が作る子供は多くても3人で止まります。団塊ジュニア世代が生まれた1974年前後が、大家族から核家族へと社会構造がシフトした時代でした。なぜ、農村の人口が都市に出たかというと、それは経済的な発展と都市に自由を夢見たからでしょぅ。
 そして、その世代の次の世代は都市で生まれ育ちますが、この段階で日本の場合はボーナス人口が急減してバブル崩壊が起きました。熟年離婚、死別により高齢単身世帯が増大するとともに、未婚率が上昇し、出生率の低下も進行しました。未婚率の上昇や出生率の低下が止まらなかった原因としては、次のことが考えられます。
・女性の社会進出
・子供を増やせよという強制的な合意形成の排除
・お見合いから自由恋愛への移行
・子育てに必要な経済力のハードルが上がったこと
・恒常的な都市への人口流入

 これらの要因は世界共通の要因でありますが、特に日本でこれだけ急速に少子化が進んだのは、やはり国土の問題があります。
 そして、団塊ジュニアはベビーブームを作り出しませんでした。日本の場合は核家族が再生産されることなく、核家族から孤族中心の社会構造へと転換が進んでいます。2030年には40%が単身世帯となります。なぜ、団塊ジュニア後の世代が子供を作ること、結婚することをやめてしまったのでしょうか。
 それはすなわち、上記に掲げた要因が、社会が大転換した1945年以降67年間絶え間なく強化され続けているからに他なりません。そして日本が戦後レジームに固執する限りこの傾向は2050年まで延々と続いていくのです。
 仮にこの傾向が大きく変わるとすれば、それは日本国が再度デフォルトしてすべてをリセットした時に他なりませんが、そのような時が今後来るとは私には思えません。

 老いは孤独への一本道といいます。未婚のままの単身世帯に加えて、離婚、死別による高齢単身世帯は今後も大きく増えていきます。結局、個人の自由、経済厚生の最大化を重んじてきた社会の末路こそ、半数が単身世帯であり、年金と医療の保険制度が実質的に破綻し、インドネシアと同じ経済規模になった2050年の日本なのです。

 私たちは、何が幸せなのかということを考えて、戻ることのできない時間を歩んでいくしかありません。