1.景気の現状:一進一退
・自動車販売の減少や輸出の増勢鈍化を背景に景気は弱含み。景気
先行指数が2010年4月をピークに下向きに転じているほか、一致
指数も9月以降は低下。内需も本格回復に至っておらず、機械受
注や雇用・所得環境は「底ばい」状態が持続。日銀短観12月調査
でも、大企業・製造業の業況判断DIが7四半期ぶりに悪化。
・もっとも、一部に明るい動きがみられるため、景気の落ち込みは
回避されている状況。11月の鉱工業生産が6カ月ぶりに増加に転
じたほか、12~1月の計画でも増産の見込み。景気ウォッチャー
調査も持ち直しの兆し。
2.景気見通し:減速が明確化
・①輸出の低迷持続、②景気刺激策の反動減、③脆弱な内需の回復
力、の3点を背景に、「足踏み」状態が続く見通し。
・輸出は、海外での景気刺激策の効果一巡に伴い、世界経済の拡大
ペースに見合った巡航速度に減速。こうしたなか、当面は、アジ
ア諸国での生産調整の動き、円高による輸出競争力の低下などか
ら、一進一退の動きが続く見込み。これまで景気を下支えしてき
た耐久財購入刺激策の効果もピークアウト。
・一方、国内民需も、大幅なGDPギャップが残るなか、回復感に
乏しい状態が持続。とりわけ、企業部門の厳しさが長引く見通
し。設備過剰感がなかなか解消されないため、設備投資の回復
ペースは緩慢。所得環境の回復も遅れるため、個人消費や住宅投
資の本格回復も期待薄。
・2011年入り後は、テレビの駆け込み需要の反動減が実質GDPを
大きく下押し。一方、9月以降に打ち出された経済対策による押
し上げ効果は限定的。この結果、2011年度の実質GDP成長率
は、個人消費の大幅減少を主因に、+0.3%とゼロ近くにまで失
速する見通し。
・デフレ傾向も鮮明に。コアCPI前年比は、資源価格要因の剥落
でマイナス幅は縮小するものの、内需低迷を主因とするデフレ圧
力が持続するため、マイナス基調が長期化する見通し。
3.12月の金融政策・金利動向
【金融政策】
・日銀は20~21日の定例会合で、金融政策の現状維持を決定。
包括金融緩和策に関しては、15日にETF、16日にREITの買い
取りをそれぞれ開始。
・白川総裁は会合後の記者会見で、茲許の長期金利の急上昇について
も言及。この背景について、「米国経済の先行きに対する悲観論や
金融緩和期待の後退により、米国の長期金利が上昇するなか、グロ
ーバル化した金融市場のもとで、各国の長期金利がこれに連れて上
昇したもの」と説明。
【長期金利】
・長期金利(新発10年債利回り)は、12月中旬にかけて一時1.295%と
約7ヵ月ぶりの水準まで上昇。その後月末にかけては、米長期金利
上昇の一服感を受け、1.1%台まで反落。
4.金融政策・金利見通し
【金融政策】
・日銀は、当面、これまでに決定した包括金融緩和策の効果を見極める
公算。先行きは状況に応じて、基金の資産買い入れ枠拡充などの追加
措置を検討する可能性あり。
【長期金利】
・長期金利は、米長期金利に連動した動きが短期的に続く可能性あり。
・もっとも、米国では▲6%ものGDPギャップが残るなか、一本調子
の長期金利上昇が続く公算は小さく、わが国金利の上昇余地も限られ
る見込み。
・加えて、①内外景気の先行き懸念の残存、②時間軸の明確化を受けた
債券買い安心感、などが金利低下圧力として作用することから、長期
金利が大幅かつ一方的に上昇する可能性は小さく、1%台前半を中心
とする推移が長期化する見通し。