改革不在の予算案では日本はもたない 

2010/12/25付

政策への出費と借金を前の年より増やさないという最低限の目標は辛くも守った。だが日本の将来を考えると、菅政権の2011年度予算案に強い懸念を抱く。その場しのぎの帳尻合わせに頼る一方で、根本的な財政や社会保障の改革に、なんら手を付けていないからだ。

国の一般歳出と自治体への地方交付税交付金を合わせた政策の経費は70兆8600億円、国債の新規発行額は44兆2980億円。いずれも10年度をわずかに下回る。政策経費を13年度まで「前年度以下」に抑えるなどの財政目標を一応は満たした。

 

将来世代に大きなツケ

 

一般会計の歳出・歳入の総額は約92兆4千億円と10年度を1千億円上回り、過去最大となる。日本経済はデフレ脱却にてこずり、政府は来年度の経済成長率を実質1.5%、名目では1%と低く見通す。景気や物価を考えれば、いま急激な緊縮予算を組むわけにもいかない。

問題は中身だ。長い目で見て、日本の財政が持ちこたえられるのか心もとない。財源の手当てに失敗したにもかかわらず、民主党がマニフェスト(政権公約)に盛り込んだ支出にこだわり、目先の選挙を意識した人気取り政策を続けているためだ。

典型が国の政策経費の53%に膨らんだ社会保障関係費だ。高齢化に伴って出費が増える「自然増」をそのまま認め、制度を長持ちさせる改革は先送りした。年金や医療、介護の給付を受ける今の人たちに痛みを感じさせないことを優先した。

国内に住む人に加入義務がある基礎年金では、給付費に占める国の負担を2分の1に保つ安定財源を確保しなかった。国土交通省の独立行政法人や財務省が管理する2つの特別会計で生じた余剰金、いわゆる「霞が関埋蔵金」をかき集め、必要額の2兆5千億円を工面した。

自民党政権が2年前に埋蔵金を年金にあてる法案を出した時に、野党の民主党は強く反対した。政権党として一転、その手法に頼る。子ども手当も財源の裏付けがないまま、2歳児までの給付増を強行する。現在の親の負担増を防ぐというが、将来世代へのツケ回しは増える。

制度改革も遅れる。菅政権は介護保険制度で12年度からの一部の利用者負担の引き上げなどを見送った。高齢世代への社会保障支出の拡大が子世代に負担を強いる「財政的な幼児虐待」(コトリコフ・米ボストン大教授)の構図がみえる。

聖域となった社会保障費のあおりで、他の多くの政策経費は減額となった。公共事業関係費は今年度の18%減に続き、来年度も実質5%の削減。政府開発援助も7%減らした。

予算の効率化や配分の見直しが徹底したわけでもない。予算の要求段階で一律10%削減を求めるなど工夫が足りなかった。行政刷新会議の「事業仕分け」を反映した削減もわずか3千億円。政務三役が省益丸出しで計上を求める例も多かった。

成長戦略や公約に関連した「元気な日本復活特別枠」の関連予算は、当初に用意した1兆3千億円から2兆1千億円に増えた。重点配分が進んだというよりも、在日米軍の駐留経費の「思いやり予算」や小学校教員の増員要求が紛れ込み、歳出圧力に押されて膨れたのが実情だ。

予算編成の最後の最後で、菅直人首相は減額が予定された科学技術振興費の上積みを指示し、同経費は0.3%のプラスに転じた。政治主導の予算をうたうなら、最初から指導力を発揮すべきだった。

 

与野党に破綻防ぐ責任

 

財政の綱渡りは一段と深刻になる。来年度税収は最悪期の10年度より3兆円以上多い40兆9千億円に改善するが、なお国債発行額が上回る異常な姿だ。外為特別会計の来年度剰余金の先取りなどで7兆円もの税外収入を立て、数字を合わせた。

11~15年度での半減を目標とする、国内総生産(GDP)に対する基礎的財政収支の赤字比率も小幅の低下にとどまる。国と地方の長期債務残高は11年度末に891兆円とGDPの1.84倍に達する見通しだ。

国債の新規発行額が横ばいでも、元利払いのための国債費は今年度より9千億円増え、21兆5千億円となる。10年物国債の金利が年2%で推移するのが前提だが、財政への懸念や市場環境の変化で金利が上がればこの出費が雪だるま式に膨れる。

今年、欧州ではギリシャやアイルランドの債務不安が市場を揺るがした。日本には1400兆円の個人金融資産があり、今は国内で国債を消化できているが、長くはもたない。帳尻合わせの予算編成とは決別し、税制や社会保障の構造を変える改革に取り組むことが緊急の課題だ。

消費税率引き上げや法人税率の再引き下げといった税制改革。年金や医療の持続性を高める給付や負担の見直し。これらを着実に実行し、経済成長を促して財政破綻を防ぐ。それが与野党共通の重い責任である。