【日本株ストラテジー2011年】海外要因が次々と上値を抑え強気になりきれず=松井証券



松井証券マーケットアナリストの土信田雅之氏に日本株の見通しを聞いた。土信田氏は、2011年の日本株式市場を「基本的に慎重」とみている。日本国内に株価を浮揚させる要因が見当たらない中、海外要因に左右される地合いが続き、「年明けの欧州問題をはじめとして、次々に懸念材料が重なってくるように思える」として、強気の見通しを描きにくいという。

――2011年の日本株価の見通しは?

どちらかといわれたら弱い。今年とあまり変わらないのではないかという見方をしている。2010年の後半になって、米国のQE2(金融緩和)や経済指標の好転、日本株の出遅れ感なども意識されるようになって、投資環境は良くなっている。当然、日本株は海外の株価をキャッチアップしていっているのだが、ポイントは、どこまでいけば追いついたといえるのか? そして、そこから先はどうなるか? ということだと思う。

ただ、日本株の行方を左右するのは海外要因だ。国内を見ると、経済成長率は高くはないし、デフレだし、政局は混乱しているなど積極的な買い材料に乏しい。明るい材料といえば、企業業績が堅調であるということくらい。そうなると、海外に追いついた後で、その後を決めるのもやはり海外頼みになってしまう。

そこで、米国の経済を考えてみると、これまでのところ、思ったよりも良い結果のマクロ指標が出てきており、2011年も回復ペースは続くと思う。ただ、そのペース自体は緩慢になると思われ、急速な回復は難しく、株価の上昇ペースとのギャップが意識される度に株価の調整局面が何度か訪れると見ている。特に雇用と住宅市場が本格回復するかがカギとなるが、現時点ではまだ自信が持てないのが現状だ。2010年12月の米国株価が、「地合いは良いのだが、上値を伸ばしきれていない」と見えるのは、私だけだろうか。このような状況は、2011年の米国株価の動きを予感させる。

基本的に、今後も米国の長期金利は上がる可能性が高いが、問題はその上がり方で、それ次第で日本株は良くも悪くもなってしまう。金利の上がり方が、金融緩和が功を奏し、米国経済の回復によるものであれば、FRBの狙いであるリフレーションであり、円安ドル高となって日本株にとってもプラスとなるが、逆に経済が思ったほど回復しないと、金融緩和による財政悪化が意識され、米国債やドルが売られ、スタグフレーションになってしまう恐れがある。同じ金利上昇でも、正反対の状況となるため、しばらくは、長期金利と実体経済の動向を見極めたいというのが基本的なスタンスだ。

――日経平均株価 の動きは?

リーマンショック直後の日経平均株価 は、2008年9月16日に11609円だった。2010年の年初来高値が11400円程度だったので、2011年の株価の高値も11400円-11600円まではいくのだろう。

ベストシナリオは、欧州財政問題がヤマを越え、米国景気も順調に回復し、新興国も高い成長率を維持するというもので、そうなれば先の高値を抜くかもしれない。ただ、欧州の財政問題への不安は拭えず、米国の景気回復はこれからも見極めが必要だし、中国の金融引き締めスタンス維持による経済への影響にも注意が必要だ。これらが落ち着かない限り、株価が高値に進むことは難しいだろう。

特に、ポルトガルやスペインなどの国債借り換えが控えていることもあり、年明けは欧州の財政問題がクローズアップされると思う。それが、片付くころには、今度は米国のQE2(金融緩和)の期限である6月末が意識される。それまでに米国の実体経済の回復が鈍いと、QE3はあるのかという議論に発展する可能性がある。また、中国もインフレ圧力が大きく、金融引き締め傾向が続き、経済への影響はある程度避けられないだろう。このように海外に懸念材料が次々と出てくるイメージがあり、日本株は上値が重い状態が続くのではないか。

日経平均株価 の11600円は、欧州財政問題が落ち着いた5月あたりにあるのだろうが、そこを抜けて高くなるかどうかは、その時の米国の景況感次第だ。

――個別に注目される産業などは?

ど真ん中の主力株がメインになるだろう。基本的に円高傾向は続くと考えていて、その中で買われる銘柄は、M&Aをする企業とか、海外で積極的に投資をする企業である。円高で日本経済は全体的には厳しいが、日本企業の株で買える銘柄はある。ブラジルなど新興国に工場を作ったり、買収したりする動きには注目されると思う。

一方で、独自に個別株では、不動産、J-REIT、ETFなどに、全体の株価調整局面では、妙味がありそうだ。相続税からみと、日銀の買い上げ政策という国策にも乗っている。

農業関連も面白い。食糧問題は長いテーマで、バイオテクノロジーによる品種改良などの技術が注目されるだろう。また、農業の効率化で農機具も評価されそうだ。

また、医療関係も長いテーマ。医療ツーリズムといわれる分野。アジア周辺から日本にやってきて治療を受けるという医療が拡大しそう。医療分野で語学を必要とするとか、これまで似ない需要が生まれそうだ。裾野が広がろう。

ただ、農業も医療も、規制緩和など、クリアすべき課題も多いので長期のテーマとしてじっくり取り組むテーマと考えている。(編集担当:風間浩)