相場の格言 (立花証券社長石井久氏)

・「株で一発当てた人間は落ちるのも早い」
一夜で大成功を成した相場師たちは何年か後には転変の波に流されていきました。それはなぜかというと「奢り」です。相場という一種の「虚」の世界で積み上げた富を、虚のままで浪費してしまったためです。株で一発当てたという人は、悲しいかなその金の活かし方を知りません。お大尽のごとくふるまって使い果たすか、その後の勝負で敗退するかのいずれかです。
 
・ 「一夜成金の一夜乞食」
相場の社会に「一夜成金の一夜乞食」という格言があります。たしかにかつての株の世界には一攫千金のチャンスがごろごろ転がっており、こうしたことから、いろいろな伝説を作り上げた英雄豪傑も何人かいました。しかし、これらの人たちが20年、30年の長きにわたって名を成し続けた例はありません。

・ 「相場と経営は致命的かどうかの判断が重要」
「致命的かどうか」の判断と決断が経営の大きな差となって表れる。相場も同じことである。
 

1993/9/30 日経新聞「私の履歴書」「ベビーブーム再来期待 経済の老化、政策次第で緩和、十年後の日本」(立花証券取締役相談役石井久氏)

昭和二十三年に二十五歳で証券界に飛び込み、六十三年に六十五歳で第一線を退いた私の人生は、日本経済の縮図に似た足取りだった。私は常に、十年先を読んでどう行動すべきかを考え実行してきた。もう一度、戦後の歩みを振り返り、十年後の二十一世紀を展望してみたい。
 
昭和二十年を境に生まれ変わった日本経済が大発展を遂げた原因は、国際環境の好転のほかに三つある。第一はパージ(公職追放)で、戦前派のオーナーや高齢の経営者が一掃されて若いサラリーマン経営者の天下になり、自己資本中心のお堅い経営から借金を苦にしない積極果敢な経営に変わったこと。

第二は三十年の保守合同以来、政治の安定が続いたことだ。これによって、先行きを気にせずに経営者、商売人が経営を積極的にやることができた。
 
第三は国防費を国民総生産(GNP)の一%以内に収めるという軍事負担の軽さで、国の資力を挙げて経済につぎ込めたことである。戦前の証券市場は清算取引中心の一種のばくち場だったが、戦後は大きく変わった。株価は実体経済の変化を先取りする先見性の特技を持った賢い動物である。「株式相場は経済を映す鏡」とはそのことを指しているが、鏡の証券市場には、逆に実像を振り回す性格もある。
 
私は戦後の日本経済の大発展は、紙切れになるかも知れない株券と引き換えに十兆円の投資をした勇敢な投資家がいたからだと信じている。十兆円は額面発行時代の払い込み資本金総額で、企業はこれを種銭に銀行からカネを引き出した。借金経営こそ高度成長のバネだったが、担保制金融の日本で銀行は種銭なしにあれほど大胆に貸せたとは思えない。
 
しっぽ(証券市場)が犬(実体経済)を振り回すというが、証券市場は経済を映す鏡であると同時に、経済を動かす心臓でもある。一九八〇年代後半の六十六兆円の時価発行の行き過ぎで、悪者扱いされ、たたかれ過ぎているのが今の証券市場の姿である。
 
私が日本経済を人間の年齢に見立ててきたのは、企業も国も、人間と同様に栄枯盛衰の摂理から無縁でなく、それは十年後を読むための目安になり、繁栄の頂点から衰退に転じる時期を見誤らないためである。
 
三十五年に十歳になり、四十五年に二十歳の成人となり、石油危機で一気に四十歳にとんだ日本経済は、今六十歳の初老期にある。十代の不摂生(四十年の証券不況)は絶食すればすぐに直るが、六十歳では元の健康体にはなかなか戻りにくい。
 
現状の日本経済は暴飲暴食のツケ(金利と償却負担)に加え、過剰貯蓄体質がもたらした実力不相応の円高で本格的な産業の空洞化に直面し、自民党の分裂による多党化で平成「応仁の乱」が始まったとも考えられる。経営者の高齢化も目立つ。欧米に比べてまだ財政に若干の余裕があるものの、かつてのような積極的な経営も成長も望むべくもない。
 
私が二十一世紀の日本経済を読む際に注目しているのは人口の動向である。来年から平成七、八年にかけてベビーブーマーが出産適齢期を迎えるが、ここで第三次ベビーブームが起きるかどうかだ。
昭和二十年代の第一次ブームで二十四年には二百七十万人に上った新生児の数は、四十年代の第二次ブームで二百九万人の山を作ったが、最近では百二十万人に減少している。これが百六十万―百七十万人に戻って三―五年続けば、日本経済の六十歳以降の年のとり方は緩慢になる。 

しかし、百二十万―百三十万人で終われば、十年後(2003年9月)の日本経済は現在の英仏並みの七十歳に一気に老け込むと見ている。文明も国も、いったん衰退を始めると引き返した例は少ない。それでも日本には貯蓄が有り余るほどあるのだから、証券業はこの先十年、まだ相対的に有利な産業だと思う。有利な投資物件や投資先が少なく、カネ対株のバランスからもそう考える。日本経済の老化を早めるのも緩やかにするのも政策のいかんであり、政治、政策のカジ取り役の方々の善処を心から念願してやまない。

2005/8/17 日経金融新聞「金融証券60年 変遷と展望 下」(立花証券取締役相談役石井久氏)

---株式市場の60年をどう見る。
 「大事なところで勘違いしてきた。好況期に暴飲暴食し、その後反動が現れるという繰り返し。低金利政策が続き、設備投資の必要がない企業までも時価発行増資で財テクに走るといった"阿波踊り"の結果、バブルが生まれた。」
「人間は20歳で大人になり、その後はぜい肉がたまっていく。経済も同じ。高度成長が続いた体験から、本当は成人しているのに、『これからも成長する』と勘違いし、カロリー計算もせず食べ続けた。
 
---証券市場で国際化、自由化が進んだ結果どうなったか。
「外国の証券会社が日本に進出したという意味では国際化が進んだが、日本の証券業の経営はほとんど変わっていない。労働慣行一つとってもそうだ。外資は優秀な従業員には格の高給を与える一方、解雇もできる。事実上の終身雇用が厳然として残る日本の証券会社にそれは許されない。」
「証券会社の利害からいうわけではないが、自由化は好ましいことばかりではなかった。株で利益を上げるには最低でも3か月、半年間の投資期間が必要というのが私の考えだが、自由化で増えたのは個人の日計り取引。かつて日計りを専門にする証券会社があったが、すべて消えていった。手数料自由化がもたらした昨今の株ブームでは、ごく一部の成功者の陰に大量の敗残者が隠れているはず」
 
---株式相場はバブル後の低迷から立ち直り、本格的な上昇局面に入ったとの見方もある。
「短期的には景気も回復しており株式相場も上がるとみている。だが10年先(2015年8月)はとんでもない世の中になっているだろう。金融機関が大量に持つ国債は大きく値下がりし、株式相場も混乱する。
 「財政赤字を解消するには消費税率を引き上げざるを得ない。年金の支給なども厳しくなる。景気や相場が上向いている今はピンとこないかもしれないが、大きな流れを読み、勘違いを繰り返してはならない。」

2006/1/14 立花月報新年の景気予想 (立花証券取締役相談役石井久氏)

(1)新年の株式市場の概況予想---曲折を経ながらじわじわと上がる展開。
 
(2)良い兆し・各論
①現在の大出来高は、通常、相場の末期に現れる現象だが、今から出ているということは、需給関係が非常によいと言うこと。
②今回の景気拡大は戦後最長となるだろう。
③07年に消費税引き上げがあれば、もちろん悪材料だが、引き上げ前の駆け込み需要で07年半ばまでは好材料に。
④株高は個人資産を増やし、さらなる株高を呼ぶ。
⑤企業が不況下で減量経営を行ってきて、健康体になっており、現在のレシオ22倍は30倍へ。強気でよい。
⑥日銀の量的緩和の解除、すなわち金利の上昇は、債券相場にはもちろん悪材料だが、800兆円の預貯金のアップする金利の一部が流れ込んできて、株式相場には好材料。
⑦旧年後半のドル高は季節要因。今年の3月に向けて1ドル115~110円に円高へ。
⑧団塊世代の大量定年退職により、退職金60兆円の一部約30兆円が流れ込んできて株高要因へ。
 
(3)悪い兆し・各論
①07年に消費税引き上げか。
②外国人投資家が、そろそろ天井と判断して売り始める可能性。但し、今年ではない。
③現在の原油だか(60ドル/バーレル)が70ドルを超えてきたときは世界経済に打撃。
中長期的には人口減少問題が非常に重要。
⑤昨年の3割に及ぶ株高は、10数年もの低迷の反動で特殊な現象。今年はない。
 
(4)結論---新年の投資のスタンス
①銘柄選択に当たっては、1).業績見通しが良いもの、2).レシオが低く割安なもの、の二点をしっかり守ること。
②投機的なやり方より、純理論的な投資的感覚の方が、成功の確率が高い。


2006/12/20 日経新聞朝刊(投資・財務2面)「株主とは 私の市場論①」(立花証券取締役相談役石井久氏)

1.市場の功績
「1949年に証券取引所が設立された頃の時価総額合計は約1200億円。今はそれが500兆円を超える」
「相場の先行きは99%予測できる世の中になった」
 
2.投資家のすそ野
「日本は約800兆円の預貯金を抱える『貯蓄過剰経済』だ」
「コンピューターのおかげだと思うが、わずか10分程度で売ったり買ったり、そんなやり方で財をなせる人はいない」
「短期売買は市場をにぎやかにするが、長期的には弊害のほうが大きいのではないか」
 
3.経営者と株主の関係
「今後は株主がより発言力を持つ米国流の関係が露骨になるだろう。新しい時代が来たということだ」
「業績を上げられない経営者がいるなら、買収されて経営者が変わったほうがいいこともある」
 
4.株式相場の先行き
--株式市場の先行きをどうみていますか。
いまの上昇相場は、あと2、3年(2008年12月~2009年12月)ぐらいしかもたないのではないか。日本の政府は約800兆円もの借金を抱え、人口減少という深刻な問題に直面している。こういう国の経済が中長期的で強くなるわけがない。消費税率の引き上げがはっきりしてくると、相場の活況は終わりを迎えるだろう。
 「今はさしあたり五合目、これが天井に近づいてきたら、私は人生最後の売り推奨を出すつもりだ。それが立花証券のお客様や従業員への最後の恩返しになると思っている」 
 
5.株式投資を始める人へのメッセージ
株というのはどこかで大天井を打つ。その局面で必ず持ち株を全部売ることを念頭に置いたうえで投資してほしい
「重要なのは株式投資をすれば世の中が見えるということだ。経済の理屈がいくらわかったところで、投資をしない人には知恵がない。株をやっているからこそ、景気や物価の流れが分かる」
「相場は人間より賢い。だから株価から教わることだ。過去を知って、未来につながる。投資家は謙虚に学ぶ姿勢を忘れてはいけない」


2013/7/5 日経新聞 今日の株式 「独眼流」石井久・立花証券元社長に聞く 日本株、アベノミクスで3年は買い

日本株は昨年の安倍晋三政権発足以来、乱高下を経ながらも上昇基調をたどってきた。 歴史的に今回の相場上昇をどうとらえればいいのか。「桐(きり)一葉、落ちて天下の秋を知る」とうたい、1953年のスターリン暴落を予言し、「独眼流」のペンネームで知られる立花証券元社長(現立花商事会長=90)の石井久氏に聞いた。

――日経平均株価はこのところ上昇基調にあります。
「(堅調な株価は)3年くらい(2016年7月まで)はもつでしょう。安倍政権の経済政策アベノミクスが株価の支援材料であることは間違いない。私は目先の株式相場については強気です。どこまで上昇するかはわかりません。ただ、今の時点でいえることは、投資家は強気の姿勢で、利益を得ることを目指して売買するのが良いでしょう」

――日銀による異次元緩和など安倍政権による経済政策をどうみていますか。
「ある程度、評価してもいいのではないでしょうか。安倍首相は今のところ、日本経済にとって『やぶ医者』ではなく、『名医』の部類に入ると思います。名医であれば、どんな薬をいつ投与するかを適切に判断することができます。 経済でいえば、薬は金融政策や財政政策ですが、安倍政権下では適切に投薬されている。日本はお金に余裕があるのだから、投入のタイミングを考えながらやるべきでしょう」

――バブル経済崩壊後、日本株は長期低迷が続きました。
「長い目でみれば、今の相場は一時的に上昇する『あや戻し』にすぎないとみています。本当の戻りではない。だから、投資家は最後は売り逃げることを前提に、買った方がいい。ほれ込んだら最後、てこでも売らず、財産として持ったままにしていると、とんでもないことになるでしょう。大切なのは、長期と短期の視点を区別したうえで投資することです」
「少子・高齢化時代に入り、日本は人口が減っていきます。このままなら日本の人口は30年後(2043年)に1億人を割り込むでしょう。人口が減る国では経済の縮小均衡が起こり、衰退します。日本経済は健康ではあるが、年齢でいえば70歳くらいになった。今まで良かったからといって、今後も良いというわけではない。昔から相場は短期売買が普通で、長期の視点で動く投資家は少ないのが実情です。私は長期の視点を踏まえたうえで短期でももうけることを心がけてきました」

――高度成長期の成功体験から、日本経済の再生に期待する投資家も多いようです。
「それがいけない。人間は、前はこうだったから、これから先もこうなると考えてしまいがちです。経験は思考の邪魔をする。戦前を思い起こすと、太平洋戦争は、それ以前に日本は負けたことがないから、勝つだろうと皆が思ってしまった。当時、私は職場で負けると言ったら国賊呼ばわりされました」

――日本が衰退しないためにはどんな方法があるのしょう。
「移民政策の推進や適切な時期の利下げなど投薬の仕方を間違えなければ、日本経済をある程度若返らせることはできるでしょう。日本には多くの預貯金があり、金利も低い。日本経済は底力は持っている。しかし、70歳で元気はつらつでも、30歳に若返ることはできません」

――いま投資すべきだとみている金融商品は何ですか。
「私は1937年ごろから、日本が太平洋戦争に負ければ急激なインフレが起こるとみて、腐らず価値も下がらない反物を買っていました。『反物貯金』です。今は豪州国債を買っています。豪州は資源国だから、将来的に日本円や米ドルなどに比べて、価値が上昇する可能性が高い。円は下落するでしょう。今からでも郵便貯金するより豪州国債を買うのが良いのではないでしょうか。インドなど人口が今後増える国にも注目しています」

――裸一貫で証券会社を築き上げ、個人資産も形成しました。銘柄選びのポイントは何でしょう。
「足元の株価から企業を評価し、上昇する余地のある銘柄を買うのが肝心です。PER(株価収益率)など基本的な指標を参考にして、株価が上昇しすぎている銘柄は買ってはいけません。企業業績をしっかり勉強し、業績が上がりそうな企業を買う。知恵のある人の意見を聴くことも大事です。私はエコノミストの高橋亀吉先生の知恵を盗んで利用させてもらいました」 「私は小学校しか出ていない『学歴ゼロ』の人間ですが、常に勉強は怠らなかった。今でも誰よりも勉強しているつもりです。証券市場では、あらゆることを勉強しておかなければ生き残れません。神様は勉強しない人にもうけるチャンスを与えません」

――銀行を経由しない金融取引「影の銀行(シャドーバンキング)」問題などを抱える中国をどうみますか。
「中国は人口が過剰で、一人っ子政策など抑制策をとらざるを得ません。このため(高齢化が進むなど)人口構成がいびつになってきている。長期的にみれば、経済が衰退する危険性があると思います」

2013/12/25 〔日経QUICKニュース(NQN)

(1)資本の逃避に備えよう。円の大幅安時代が来る。株は来年2割上昇も 

2012年末の安倍晋三政権の発足から、日本株は曲折を経ながらも上昇基調をたどり、24日は日経平均株価が1万6000円台を一時回復した。消費税増税が実施される来年は十二支の午(うま)年。上昇相場が下降に転じるなど変動の年とされる。来年以降の相場はどう動き、株価変動のリスクに個人投資家はどう備えれば良いのか。1953年のスターリン暴落を予言して「相場の神様」と呼ばれ、「独眼流」のペンネームでも知られる立花証券元社長(現立花商事会長=90)の石井久氏に聞いた。

――日経平均株価は年初から5割上昇しました。来年の株式相場をどう展望しますか。
「来年はもちろんですが、あと3年くらいはかなり明るい相場でしょう。強気でいいと思います。経済全体は縮んでいますが、力はある。日本には1000兆円以上の個人金融資産があります。こんな国は世界に例がありません。(安倍晋三政権の経済政策である)アベノミクスを受けて、さしあたり株の需給関係は良いほうです。日本の経済実態からいっても、1~3(2014年12月~2016年12月)年は景気が良いことは歴然としていています

――2020年の東京五輪の開催も決まりました。
「それもあって、株価がしっかりしているわけです。証券会社でも強気の見方をする人が多いんじゃないですか。(日経平均は)短期的には1~2割は上がるでしょう。ただ、倍になるということはありません。こうした良い状況は10年はもたないでしょう。短期売買で1~2割の上昇を取りに行くのは結構でしょうが、何か問題が起こったときにどうするかということを常に考えていおく姿勢が欠かせません。長期的な視点で行動することが大事です」

――なぜ、10年後の相場に悲観的なのですか。
「日本は1000兆円以上の債務を抱える借金大国です。GDP(国内総生産)の2倍も借金をしている国はほかにありません。日本政府はこれからも国債を毎年40兆~50兆円増発するでしょうから、国の借金はさらに積み重なります。今は国内の貯蓄率が高く、短期的に需給が良い。通貨価値は維持され、国債を買う人も増えていますが、いずれは借金まみれの日本、日本円を信用しない投資家が増える。資本の逃避が起こり始めるでしょう。まだ今は気づく人は少ないですね。しかし、あと2~3年で、多くの人が『日本の通貨価値が相当下落するだろう』と思う時代がくるのではないでしょうか。多くの人が気づいたときには、たいてい大きな損が出ています」「私は48年に証券界に身を投じ、変化をとらえては、金融資産を増やしてきました。10年単位の長期展望と1~3カ月の短期展望を組み合わせて、稼ぎました。政府が悪いという人もいますが、自分が愚かなんですよ」

――円はすでに1ドル=104円台まで下落しています。
「円はかつての1ドル=360円から70円台まで上昇したけれど、こうした流れはいずれ逆転するでしょう。円相場はあと10年すれば1ドル=130円、150円台に下落すると思います。かつての360円まで戻るとは思いませんが、長期的には1ドル=200円台、300円台という時代がくるかもしれません。短期的にはインフレは株高の材料なんですが、それが日本からの資金流出という形で、経済の足を引っ張る時代がきます。日本には資源が少ない。少子・高齢化がこのまま進めば、人口は30年後に1億人くらいに減り、国力はだんだん落ちていく。日本の経常収支は今、所得収支のおかげでなんとか黒字になっている。過去の蓄積でなんとか帳尻が合っているということです。投資家は貿易収支、国際収支をみて通貨価値の変動を見極めることが大事です」

――かつて、野村証券の田淵節也会長は、石井さんが証券界でもっとも相場巧者だと語っていました 。個人として、どのような資産運用を心がけていますか。
「私は10年ほど前から豪州国債を買っています。購入する通貨は、資源国であるかどうかという観点で選んだほうがよいでしょう。それが一番無難なやり方です。私は1豪ドル=59円台の時に買いましたから、円建ての資産が大きく膨らみました。大型株を買うよりも利回りや価格の上昇率が高く、安全です。日本では、多くの人が預貯金をしてのうのうとしていますが、どうして今、金利が1%にも満たない郵便貯金をするのでしょうか。私の資産の6割は豪州国債などで、残りの4割が現預金などです。豪州関連で年3億円くらい利息収入があり、入ってきた利息でまた豪州国債を買っています」

(2)株の成功に「おごりは禁物」「大衆に逆らえ」

――相場師で財産を残した人はあまりいません。最終的に成功する秘訣は何ですか。
「一時的に成功しても、最後は失敗して、損を出している人が多いのが実情です。最終的に成功した人は株の世界では数えるほどしかない。株価が高いときに買って、短期的な暴落で大きな損を出してしまうからです。株の世界で成功するには、おごらないことです。人は周囲にちやほやされると喜んで、阿波踊りをやってしまう。銀座に毎晩飲みにいって、夜更かしする人が成功するはずがない。私は夜11時になったら、どんなお客さんでも振り切って帰ることにしています。私は60年前に住んでいた家に今も同じように住み、同じように生活しています」「夜10時に寝て朝6時に起きます。時計の針のように正確です。8時間寝れば十分ですから、そういう生活を60年以上続けています。私は分相応のことしかやりません。人間、分を超えると間違いが起きます。そうすると、神様はゴツンとげんこつを落としますね。失敗というゴツンをやります」

――来年1月からは少額投資非課税制度(日本版ISA=NISA)が始まります。
「預かってもらえる金額が小さいから、大きな財産の形成とまではいかない。(新制度を使って)個人投資家は財産の膨らませ方をしっかり勉強したら良いと思います」

――新規に株式を始めようとする個人投資家へのメッセージをお願いします。
「成功するには、みんなが弱気のときに強気になることが大事です。人に逆らう、大衆に逆らう、大勢の人に逆らうことです。大勢の人に便乗するようではダメです。今の時点で日本という国が先行きどうなるかということをしっかり勉強している人がいれば、そういう人の知恵を利用したほうが良いでしょう」

――多くの人の逆をいくとすれば、今は株を売るタイミングなのでしょうか。
私は株を売るのは今よりあと2~3年先(2015年12月~2016年12月)のほうが良いと思います。しかし、10年先までもっていたほうが良いということではありません。投資家はあと3年のうちに売るということを踏まえて行動するほうが良いでしょう。長い目でみて判断し、行動することが必要です。行動力も大事ですね」「貧しい家庭に生まれた私は終戦直後、警視庁の巡査などを経て、すかんぴんでこの世界に飛び込みました。それが数千万円となり、あっという間に数百億円まで膨らませることができました。繰り返しになりますが、重要なのは大きな変化を見逃さないことです」

――東京証券取引所が検討している夜間取引をどうみますか。
「あまり感心しません。深夜に取引をやれば、証券会社は従業員に残業代を出さなければいけない。やりたい証券会社とやりたくない証券会社があるでしょう。労働時間が長すぎるのは良くありません。今は証券界はもうけていますが、マイナスも計算したほうが良いのではないでしょうか」

――来年は午年ですが、相場格言で来年の株式相場にあてはまりそうなものはありますか。
「私はそういうことは考えません。ひたすら自分の考えに固執することです。相場格言にとらわれ、縛られる人がいますが、それではいけません」

2014/1/3 日経新聞、 「自分で考えよ」 伝説の相場師に聞く

1953年3月のスターリン暴落を予言し、伝説の相場師として知られる立花証券元社長の石井久氏(90)。コンピューターが席巻する市場に人間がどう臨めばいいかを聞いた。

――株式市場は人間の手から離れています。

「ロボットは短期的な売買は得意だが、時代の趨勢を読んで相場の大きな波をつかまえるのは苦手だ。人間の強みは洞察力。思考訓練を積めば、コンピューターを使わなくても十分戦える」

「私は情報は新聞や雑誌などから得ており、インターネットは使えない。長期投資にはそれで十分だ。重要なのは書いてあることをうのみにせず、常に自分の頭で総合的に考えるようにすること。ロボットに対抗する唯一の道だろう」
 

――その力をどう養えばいいですか。

いちど投資で利益が出てもおごらず、内外情勢の勉強を続けること。私は60年以上、規則正しい生活を続け、勉強もしている

「多数意見の逆を考えることも大切だ。15歳で福岡の鉄工所に勤めながら毎月残った2円で反物を買い続け、それが起業の元手になった。国力を考えれば戦争に突入すれば敗戦となり、インフレが起きて現金の価値が下がることは自明だった。当時の大多数からは相手にされなかったが」

「スターリン暴落の前は通常は株式投資をしない人まで参加し始め、相場は惰性で上昇していた。みんなが有頂天ななかで反対のことを言うのは異端視されるが、だからこそ相場が暴落する条件がそろっていたといえる。朝鮮戦争で米国とソ連が疲弊するなかで、米紙の情報から3月ごろに休戦になると踏んだ。世の中にある情報をそしゃくして冷静にみれば、時代の流れを読める」
 

――株式相場の転換点は近づいていますか。

向こう3年(2016年12月)ほどは高くなるとみる。2000年のIT相場の高値(日経平均株価で2万0833円)は超えるだろう。安倍晋三政権が続き、経済重視の政治が続くことが条件だ。1989年末の最高値をうかがうような大相場にはならないとみている」

「長期では日本経済を悲観している。人口減少下でも政府は移民政策に消極的だ。国の借金は1000兆円に及ぶ。貿易赤字も定着し、必然的に円は弱くなる。個人資産の6割はオーストラリアドル債で保有している。キャピタルフライト(資本逃避)が本当に起きる前に、政府は行動しないといけない」



石井久氏の見解について

スターリン暴落を的中させた伝説の相場師もそろそろ転換点が近いことを予測しています。日経平均株価は保ちあい局面に移行し、いつ暴落が来てもおかしくありません。株価暴落の前兆をこのブログでもとらえていきたいと考えています。残念ながら、石井先生は、もうすでに90歳を超えているため、今後お話をお伺いすることが難しいです。石井先生の技法を今後の世のためにも引き継いでいきたいものです。(2015年7月現在記)